2-1 説明の順番


聞く側の脳を働かせる

 説明の際には、聞く側の脳内の動きを想像しながら、話が頭に入っていきやすい順番で話します。
 聞く側の脳内に、これから話すことに関連した情報を準備させ、これから行う会話の構図を理解させてから、構図のパーツを埋めていくように話を進めていきます。

説明する側と聞く側のギャップ

 説明する側というのは、これから説明する準備をして会話に臨みます。このため、説明する事柄が、どの事柄であるのかがわかっています。また、聞く側や関係者との過去のやりとりなどの経緯や、指示されている要件といった周辺情報を既に頭のなかにホットな状態で呼び出されていて、それを踏まえて会話が可能な状態になっています。
 これに対して聞く側というのは、どんな話が始まるかわからず、周辺情報も記憶のなかに眠っています。それを会話しながら、説明する側の準備済の状態に追いついていく必要があります。どの辺りの事柄に関する会話であるかを理解し、説明する側や関係者とどのようなやりとりがあったか、どのような指示をしていたかといった過去の経緯を、眠った記憶のなかから引っ張り出しながら説明を聞くことになります。

ギャップを埋めていく説明の順番

 この開始時点のギャップを認識し、効率的に埋めていくことを意識した順番で話を進めることで、聞く側はスムーズに結論に至ることができます。説明する側としては、聞く側の脳がどのように働いているか、いまどの段階まで来ているのかを想像しながら、説明を進めていくことになります。
 おおよその説明の順番と、聞く側の認知、脳の動きは以下のようなものになります。

手順
内容
聞く側の認知
聞く側の脳内の働き
議題・アジェンダの提示1(範囲の提示) 〇〇案件の件 聞く側のタスクリストのうちどこに関連する事柄か 記憶の格納場所を検索
議題・アジェンダの提示2(対象のフォーカス) 誰に対して、いつ、どこで行う、△△作業の件 聞く側が認識しているタスクのなかのどの箇所の事柄か 要件、経緯など周辺記憶の呼び出し
論点の提示 作業の完了。作業の遅延。意見の衝突発生。など 聞く側が回答する論点の把握 判断のための枠組みの検索
議題・アジェンダの提示3(分類) 報告、連絡、相談のいずれか。情報共有か承認・判断を求めるものか 聞く側に求められるアウトプットの理解 判断のための枠組みの選択
経過の説明 現在の状態。予定に対する進捗状況。論点に対する関係者の発言 事実関係の整理 判断枠組みへの情報のあてはめ
聞く側からの質疑 事実関係の整理の補充 判断枠組みに対して不足する情報の補充
説明者の解釈 完了条件に対する判定。遅延の原因や影響。コンフリクトへの対応案 参考情報 判断枠組みの選択とあてはめの妥当性検証

失敗しないように構成する

 「何の話だっけ」、「私に何をしてほしいんだ」、「結論を先に言え」、「要するにどういうことか」。
 説明において、よくある聞く側からの指摘です。こうした指摘は、聞く側の認知や脳の動きを考えずに、自分が話したいように話してしまったことから出てくる指摘です。
 こうなってしまっては、説明は失敗です。失敗しないためには、聞く側がどう理解し、どう判断するのかに想像を働かせたうえで、説明を構成することが必要となります。