1-7 連絡はなぜ、どのように行うのか

先読みと波紋の広がりの把握

 連絡は先読みをして先手をとるために行います。
 仕事はつながっています。あなたの作業の結果が波紋のように広がり、良かれ悪しかれ周りに影響を与えていきます。その波が届く前に情報を届け、準備を促すこと。それが連絡に求められることになります。
 このため、起こった事実以上に、波がどのようなかたちで届くのか、つまりどのような影響が予想されるかを伝えることが重要となります。作業にミスがあったとき、そのミスの内容よりも、そのリカバリーのために近い将来、割り込みで作業をお願いすることになるといった、相手にとっての具体的な影響が重要となります。
 それを伝えるためには、仕事が誰とつながっているか、どうつながっているかを押さえておくことが必要となります。あなたが作業をミスしたとき、そのことを誰が誰に謝るのか。ミスした状態をリカバリーするために誰が作業をすることになるのか。
 さらに影響は社内だけに限らず、社外にも及びます。顧客は誰に何を謝ることになるのか。どういったリカバリーや補償をすることになるのか。それが一周回って社内にどう波及してくることになるのか。そういった関連性の把握が必要となります。

同報連絡か個別連絡か

 影響の流れが把握できたら、次は実際に連絡を行うことになりますが、連絡の仕方には二つの方法があります。
 関係者に一斉同報で連絡を行う方法と、関係者に対して個々連絡を行う方法です。いずれを採用するかは、時限までに連絡がやりきれるかという、情報のロジスティクスの都合により決定されます。決定するための要素としては、状況の切迫度合い、影響する可能性のある関係者の数になります。

同報連絡を行う際の注意点

 状況の切迫度合いが高く、連絡にかけられる持ち時間が少ないが、影響する関係者が多い場合は、一斉同報連絡を行うことになります。
 例えば、災害時の連絡などがこの条件に該当します。切迫度合い、持ち時間、関係者の多さを考慮すると、個々の事情に合わせた情報の提供や、個別具体的な影響とその対応示唆を行うことは困難となり、一斉同報連絡しか選択肢がなくなります。
 一斉同報連絡をする場合、情報が個々人向けに最適化されていないため、受け手側が個々判断して対応する範囲が広くなります。このため、誤解や予測していなかった受け手の反応も発生しうる点に注意が必要になります。
 同報連絡でも、受け手側に適切に先手をとった行動をしてもらうためには、事前に行動をマニュアル化しておいたり、訓練を実施しておくなど、受け手側が個々判断できる準備をしておくことが求められます。逆に、こうした準備がない状態で一斉同報連絡を用れば、受け手側が混乱し、連絡に対する質問への対応に追われる可能性もあるため、連絡後の対応に配慮する必要があります。

個別連絡はポイントをおさえて

 一方、切迫度合いが低く、影響する関係者も限定できる場合は、関係者に対して個々連絡を行うことになります。
 できるだけ各関係者の状況に照らして、事象や影響を個別化、具体化して情報を伝達します。これにより、状況に対して連帯して対応でき、悪い影響を抑えたり、良い影響を拡大することが可能となります。
 この各関係者の状況に照らして個別化、具体化するというのが、いわゆる「ポイントをおさえる」ということになります。ポイントをおさえずに、ただ、連絡が大事だからと、あなたの状況だけを伝えても、相手からすると「だから、何?」という受け止めになってしまいます。
 先読みをして先手をとってもらうためには、相手にとって何が必要かを考えたうえで、情報伝達を行うことが重要となります。

感情的なバイアスに流されない

 一斉連絡を行うか、個別連絡を行うかを決める際、なるべく大ごとにしたくない、小さく穏便に済ませたいという欲が頭をもたげます。なるべく連絡する人数を絞り込みたいという範囲に対するバイアスと、なるべく影響を特定したいという箇所に対するバイアスがかかります。
 しかし、連絡の目的が先読みと先手である以上、タイミングが最も重要なポイントとなります。バイアスに押されて慎重になり、タイミングを逸してしまうよりは、可能性を広く捉えてもタイミングを逃さずに連絡を行い、その後の情報収集で可能性を収斂させていく方が、結果として事態の収拾はしやすくなります。感情的なバイアスに流されず、機械的な動きをするように心がけた方がよいと思います。