1-1 報連相の定義

報告、連絡、相談の違い

 報連相は職場での人間関係をつくるうえで、役に立つツールになります。しかし、報告、連絡、相談の違いが不明瞭であり、ツールとしてどう使えばよいのかがわかりづらいと感じます。そこで、まずは報連相を定義したいと思います。
 報告、連絡、相談はいずれも仕事上の情報の伝達です。その違いは、①任意性、②伝達相手、③それをしたとき、しなかったときの評価になります。

報告
連絡
相談
任意性 必須 任意 自由
伝達相手 指示者 関係者 誰でも
評価 行わないとマイナス評価 行わないとマイナス評価。かゆいところに手が届くとプラス評価 うまくできると味方が増える

報告とは

 報告はその作業の対して行う、必須の情報伝達となります。上司から作業を指示された際、その結果を伝えることが、その典型です。伝えることが必須であるため、行ったことのプラス評価はほぼありません。逆に、行わないことで大きなマイナスの評価を受けることになります。
 それでは、報告はなぜ必須なのでしょうか。
 仕事というのは、ある作業が終わったら次の作業を進めるというように、複数の作業を組み合わせて実行されていきます。一つの作業が終わったとき、それが伝達されなければ、終わったかどうかわからず、次の作業に取りかかることができません。また、作業がうまくいかず計画変更が必要なとき、報告がないとその判断を逃すことになり、仕事全体を期日通りに終わらせることが危ない状況になります。こうしたことがないように、情報を共有して、作業を連動させながら、仕事全体を終わらせるために、報告が必要となります。
 さらに、作業の指示者には、さらに上位の指示者が存在します。あなたが報告をしないことで、あなたの指示者はさらに上位指示者に報告をすることができません。そうすると、あなたの指示者は「報告もできない奴」として、上位指示者からマイナスの評価を受けることになります。このため、報告をしなかったあなたはは、あなたの指示者の足を引っ張ったとして、マイナス評価を受けることになります。
 なお、報告は指示者にとって必要なものを伝達することです。何が必要なものかは指示者の状況を把握し、思考をトレースしないとわかりません。このため、組織のなかで一つ上の階層の人が、どういった思考、行動をしているかを観察し、理解しておくことが重要となってきます。これが難しい場合は、指示者がどんなことが気になっているか、事前に確認をするようにしてください。

連絡とは

 連絡はその業務の関係者に、任意で行う情報伝達となります。関係者とは、作業の結果、起こる事象によって影響を受ける人たちになります。ある顧客からの依頼に対して、この先に作業が発生するかもしれない関連部署に顧客依頼の情報を伝達することが典型例です。正式な指示、依頼行為ではなく、あくまで将来的に影響がありえる情報を伝達しているものであるため、任意の行為となります。しかし、任意であるにも関わらず、行わないことで、周りに目を配れない、気のつかない奴というマイナス評価を受けることになります。
 かといって、なんでもかんでも情報を伝達することもプラス評価にはなりません。とかく、ノイズとなる情報が多く、その取捨に追われる社会人にとって、どうでもいい情報を伝達されることでわずかな時間を奪われることを不快に感じることもあります。このため、次の行動の準備につながるような、相手にとって有用な情報を伝えてもらえた場合に限り、気の利く奴というプラスの評価を得ることができます。このため仕事のつながりを把握したうえで、発生しうる影響を予測し、そのなかに登場する関係者を抽出して、選別した情報を伝達することが必要になります。

相談とは

 相談は誰に対して行うこともできます。行うかどうかも自由です。上司に指示された作業の進め方がわからないので、別の先輩に相談するというのがよくある例です。
注意したい点は、自由度が高いため、そこの期待することも多様になるということです。別の先輩に相談するケースを考えても、以下のような期待が想像できます。

 ・やり方を知っている先輩に教えてもらいたい。
 ・作業がうまくいっておらず、指示者への報告に際して味方になってもらいたい。
 ・先輩のことが気になっており、話しかけるきっかけが欲しい。

 行うかどうかだけでなく、何を期待するかも自由となります。
 また、仕事における根回しは、相談の名のもとに行われることが多いです。相談の体裁をとって、相手の意見を汲み取りつつ、当事者として片足を突っ込ませることで、報告の場で反対側に回られるリスクを軽減するようなことも行います。また、大事な相談を持ち掛けることで、相手の承認欲求を満たし、こちらの味方になってもらうようなこともあります。
 もちろん、相手からみると、あくまでただのアドバイスですので、発言に対して責任を負うものではありません。また、ただのアドバイスとはいえ不用意な言質をとられることは避けるでしょう。その辺りの心情、距離感を図りつつ、ゆるい協力関係を築いて、外堀を埋めるように、味方を増やすという根回しは、相談という名のもと行われることになります。