1-5 連絡は誰に行うのか

連絡先の関係者の特定

 ある事柄から影響を受ける関係者が連絡の対象になります。
 そこで問題となるのは、影響を受ける関係者をどのように抽出、選択するかです。業務フローや社内外の組織との関連をある程度俯瞰的に把握していないと、ある事象の波紋がどう広がっていくのかを予測することができません。このため、誰に報告すればよいか、単に指示の構図を理解していればよかった報告の場合とは大きく難度が変わってきます。
 個々の事柄が会社という組織のなかでどう位置づけられるのかというのはマネジメントの領域であり、仕事としては課長級の役職の領分になってきます。気になる点があれば、指示者に報告のうえ、誰に連絡すべきかを指示者や課長級の役職者に相談した方がよい事項となってきます。

前後の作業者の把握

 しかし、すべてを上席に頼るというのも気が利かない感が否めません。例えば、自分の作業の遅れによって、それを待っている後続の作業者が影響を受けるというのは、比較的簡単に想像できます。このように、自分が知りえる範囲で、影響する人に連絡をするのは自立的に行うべきことになります。
 そのために必要となるのは、自分の作業の前後に誰が何をしているのかを知ることになります。前後の流れを知ることで、自分の作業に影響を与える事柄は何か、自分の作業が影響を与える人は誰かということがわかるようになります。それにより、周りの状況をみて先読みし、自分の作業をスムーズに進めるための調整を前段の作業者と行うことができたり、後続の作業者があなたの作業待ちになりそうなとき、別の作業を進めてもらうような調整ができたりと、ひとつの事柄が与える悪い影響を軽減させていくことができます。

連絡の有無に対する評価

 こうした作業の前後の流れを知り、気配りをできることことが、視野が広いという評価につながっていきます。また、自分が観察した事実を情報として流通させて、現場の作業をスムーズにすることができれば、気が利くとか仕事に対するセンスがよいという評価が得られ、信頼感を高めることができます。
 連絡は任意で行うものです。よって、連絡をしなかったこと自体がとがめられることは多くはないでしょうし、実際に問題が顕在化した時点で関係者の方でも対応することで致命傷は回避するでしょう。しかし、その後に、こうなった遠因はどこにあるのか、それを予見することができなかったのかを振り返るなかで、あなたのところに遠因となる事象があったり、予見できる情報があったと気づくことがあります。そのとき、影響を受けた人は思うでしょう。「なぜ、わかった時点で言ってくれなかったのか」と。
 あらかじめわかっていれば、影響を軽減したり、回避したりする選択肢もあったかもしれません。それが時間の経過とともに、選択肢は少なくなっていき、気づいた時にはできることはほとんど残っていないという状況にもなりえます。そうなったとき、あなた自身に対する他人のことを考えられない人といった評価をもたれたり、あなたの所属するチーム、部署に対する非協力的というイメージが植えつけられる可能性もあります。

連絡巧者となるための観察

 仕事は信頼関係があった方が、コミュニケーションが円滑化し、協力しあうことで、効率的に進めることができます。そうした環境を作るために、視野が広くて気が利くと思われるのと、自分がよければよい非協力的な人たちと思われるのと、いずれがトクで合理的かといえば、やはり前者のような心証をもってもらう方でしょう。
 まずは、自分の作業の前後に誰が何をしているのかを理解することからはじめてください。定例の報告会議などで、周りの人がどんな仕事をしているのかをよく聞き、それがどんな順番で流れていくのかを観察します。それを続けることで、自分の周りの仕事に対する理解の範囲を広げ、他所で起こっていることが自分に与える影響と、自分がしたことが他所に与える影響がどのようなものであるかを把握するように努めていきます。
 このように、自分の周りで働いている人たちと、どのようにつながっているか、興味関心をもち、良好なつながりを維持するマインドを持つことが肝要となってきます。